ラッキーボーイ






「真田ァ!?」
「・・・・・・桜庭?」



街中で出会ったのは本当に偶然。いや本当に待ち伏せとかストーカーとかそんなんじゃなくって。
しかもいつも一緒にいる郭や若菜はいなくて真田一人!
やった!俺ってマジでついてる!あぁ神様ありがとう!!



真田の制服はブレザー。紺のジャケットにライン入りの赤いネクタイ。
初めて見たけど、うん、よく似合ってる。
「なんで真田がこんなところにいるんだ?確か家ってこっちじゃないよな?」
「あぁ。今日は部活の方で展覧会があったから」
「・・・展覧会?」
詳しく話を聞けば、真田は書道部員らしい。なんかスッゲー意外だ。
「俺、ユースに入ってるから普通の部活じゃほとんど出れないし」
週に一度しか活動がないのが都合よくて入ったのだと言う。
「じゃあ真田って習字とか上手いんだ?」
俺が『制服姿に続いて真田の情報ゲット!』とか思いながら聞くと、真田は少し考えて、
「・・・特別上手いって訳じゃ、ないけどな」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・!!!!!!!!!!
やっ・・・・・・た!!やったぜ俺は!今日は本当にマジでついてる!!
2時間目の英語で当たったのも、それで変な訳してクラス中で大爆笑されたのも、学年一可愛いリョーコちゃんに笑われたのも全部この時のためだったんだ!!!
だってそれほど今の真田の笑顔は可愛かった!もうリョーコちゃんなんて全然目じゃないぜ!!
郭や若菜はいつもこんな真田の笑顔を見てるのかよ・・・。
ズルイ。ずるすぎ。
あーでもこんな可愛かったら一人占め(二人占め?)したくもなるよなぁ。
ホントあいつら羨まし過ぎ。



真田と楽しく(少なくとも俺的には)会話をしながら駅を目指す。
本当は俺の家は駅の方じゃないんだけど、どうしても真田に聞きたいことがあって。
今この時を逃したら今度いつ聞けるか分かんねーし。
選抜じゃ郭と若菜がいるからなぁ・・・。あいつら真田のガード厳しすぎ。
それになにより、ここで一気に真田との親密度をアップして、次の選抜の練習の時には上原や藤代、鳴海達をアッと言わせてやりたいし!!
もうすぐ駅に着いちまう。
さぁ行け、雄一郎!男だろ!!今ここで聞かなきゃ男が廃る!
「ああああああの、さ、真田?」
・・・なんじゃこりゃッ!!声が裏返りまくりじゃん!
「・・・・・・うん?」
訝しがりながらも返事を返してくれる真田。あぁなんて優しいんだ・・・(泣)。
「あ、あの、あのさっ?」
「うん?」
「あのっ・・・・・・っっっっっケータイの番号教えてくれねぇ!!!???」
「え?ああ。別にいいけど?」
・・・・・・サラリ。
「え・・・?」
「だからケータイの番号だろ?別に全然構わないけど」
そういって制服のポケットからシルバーメタリックの携帯を取り出す真田。
「で、電話とかメールとかしてもいいのか・・・?」
「いいけど・・・。それ以外に何に使うんだよ?」
苦笑する真田。その表情がこの出来事を現実だと俺に示してくれて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・よっっっ・・・しゃぁ!!!
あぁ俺ってば今日ついてついてつきまくってるぜ!まさにラッキー☆ボーイ!!
俺もいそいそと自分の携帯を取り出して自分の番号を探し出す。
あ、真田と俺の携帯、機種まで一緒だ。さらにラッキー。



「じゃあまた今度、選抜でな」
駅の改札を前に別れの挨拶をする俺たち。これでお別れってのが寂しいけど。
「あぁ、またな」
そう言ってホームに来た電車に乗るべく走っていく真田。
眩しい後姿。あぁ本当に眩しすぎてサングラスが欲しいかも。
真田を乗せた電車が発車して、俺はそれをメールを打ちながら見送った。
送る相手は当然真田。
次に選抜で会うまでにどれだけ親しく仲良くなっておくかが勝負だ。
何だかんだ言って真田を気にしている上原たちにも、真田を独占している郭と若菜に対しても。
まぁ負ける気は無いけどな!何か俺って真田に関してはついてるみたいだし?
なんたってラッキー☆ボーイだからな!





2002年5月28日