おまえを一番最初にしてやる。
一生、忘れないでいてやるから。



一生、覚えていてやるから。
だから。





キセキ





クナイを伝ってぬるりとした液体が手を流れる。
肉を突き刺した感触が残っている。
ゆっくりと体重をかけて凭れてくる体。
少しずつ力が抜けていく。
命の灯火が消えていく。
俺が、消した。



「・・・ナ、ルト・・・・・・・・・」



サスケの命。
俺が、消す。



だって、里抜けは犯してはいけない罪なんだ。
忍びなら誰だってそれくらい知ってる。
サスケだって知ってるだろ?おまえは俺なんかより優秀なんだから。
なのになんで。
なのになんで。



なのになんで、おまえは抜けたんだよ。



頭いいのに馬鹿だ、おまえ。



重い体を抱きしめた。
夜の闇みたいに黒い髪。
それとは逆の色をした肌。
赤くて力のある眼。
全部全部、知ってる。
見慣れた姿。
うちはサスケ。
俺のライバル。スリーマンセルの仲間。
認めてくれた人。
認めて欲しかった人。
大事な、やつ。





そんなサスケを殺したのは、俺。





抜け忍を追いかけて殺すのは追い忍の役目。
いくら「うちは」だからといって、危険分子を飼うほど里だって甘くない。
ただでさえ十分すぎる化物がいるというのに。
これ以上厄介ごとを背負い込むことなんて出来なかった。
「うちは」の血統は勿体無い。
だけど写輪眼だけ残せれば。
汚い里のオトナの事情。それを知ってて生きてきた。
少なくとも、自分は。
疎まれて忌まれて生きてきた。
だから、せめて。



おまえが里に利用される前に、俺がサスケをサスケとして死なせてやるから。
それが、俺に出来る唯一の手向け。
だって俺はこの里を滅ぼさせるわけにはいかない。





なぁサスケ。
おまえ、何で俺が今まで“この里で”生きてきたと思ってる?





今だけは胎に住んでいる化物の力を嬉しく思う。
でなければ写輪眼となんて対等に戦えなかった。
それどころか、相手を殺すことなんて。
出来なかった。九尾がいなければ。
良かった。
よかった。



「・・・サスケ・・・・・・・・・っ」



忍ならば必ず通らなくてはいけない道。
それを今、通る。
抜け忍である仲間にクナイを突き立てて。
その命を、奪って。





一生、忘れない。





その体に火をつけて。
火遁の術、おまえの方が得意だったのに。
それなのに何でこんなことになってるんだろう。
馬鹿サスケ。
大蛇丸のところに行けば強くなれると思った?
だとしたらおまえ、本気で馬鹿だ。



俺は、おまえとなら一緒に強くなって生けると思ったのに。
それなのに。



「一人で先にいくなよなぁ・・・・・・」
腐臭を漂わせて激しく燃える。
そうだ、全部燃やせ。欠片さえ残さないように。
忌まわしき血継限界なんて残さないように。
灰さえも残さずに燃え尽きろ。



俺は一生サスケのことを覚えて生きるから。
だから。





「ナルト・・・・・・」
かけられた同期の中忍の声に振り向く。
その顔は見れても、表情は見ることが出来なかった。
今はまだ、上手く作れない。
この手がアイツの肉の感触を覚えている限り、笑えない。
だから一生、笑わない。



もう笑えないよ、サスケ。



忍としての一歩を踏み出した。
血塗られた道でもおまえと一緒が良かったよ。
だけど、もう遅い。
おまえは死んで、俺は生きる。





サスケ



サスケ



・・・・・・・・・サスケ





俺を憎んでいい。
好きなだけ詰ればいい。
おまえを殺して、俺は活きるよ。
だから。





「・・・・・・・・・バイバイ」





ウスラトンカチ
そう言う生意気なおまえの声ももう聞けない。
さよなら、サスケ。





・・・・・・・・・さよなら、サスケ。





2003年9月6日