朝起きたら、何だか腰が痛くて起きれなかった。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これって、やっぱり、あれなのかなぁ・・・・・・。
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜だからっ! だからあんなにやめてって言ったのに!!
それなのにそれなのにそれなのに〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!



、朝よー! 起きなさーい!」
「は、はーい!」



お母さんの呼ぶ声に反射的に飛び起きたらめちゃくちゃ激痛が走って。
バカだ、私・・・・・・・・・・。





pash by babes





、あなた昨日は夕飯も食べなかったし体調大丈夫?」
「う、うん。昨日はちょっと疲れてて。でももう平気だから」
ごめんなさい、お母さん。本当のことは言えません。絶対絶対言えません。
「そう、ならいいけど無理はしないのよ? 学校でも辛かったら保健室に行きなさいね」
・・・・・・・・・・ごめんなさい、お母さん。
あなたの娘はそんな心配してもらえるほど良い子ではないのです・・・・・・・・・・っ!
昨日の、あの、放課後、からっ!
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜ぜ、絶対言えない・・・・・・・・・っ!



「行ってきまーす」
声だけはどうにか元気っぽく言って、家を出発する。
っていうか、歩くたびに響いて痛いかも・・・・・・。今日、体育なくて良かった。本当に良かった。
こんなんで体育やれって言われたらきっと死んじゃう・・・・・・!
世界中の女の人ってすごいんだなぁ。こんな痛みに耐えてるなんて。
あんな、恥ずかしい行為に耐えられるなんて。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
待って、待って待って待って今のなしっ!
なのになんで頭の中でリピートされるの!? もう、ちょっと、やめっ! ストップ!
やだやだやだやだやだ―――――――――――――――――っ!



指が、見た目よりもゴツゴツしてた。
でも、唇は柔らかくって。
私より小さくて細いのに、でもしっかり筋肉ついてた。
それに、それに―――――――――――



先輩、家出るの遅すぎ。いっつもこんな時間に学校行ってんの?」



うん、こんな感じの声。
でもあのときはもっと熱っぽくて、掠れてて・・・・・・・・・。



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「なんで越前君がここにいるの―――――――――――――――っ!!」
っていうか、今、朝! 登校時間! そんな時間に、なんで、私の家の前に!?
それに部活・・・・・・・っ!
「―――――――――――っ」
大きな声出して腹筋使ったら、やっぱり腰まで響いて。
やだもぉ私、ホントにバカ・・・・・・・・・。
痛い・・・・・・・・・。
「・・・・・・・・・先輩、平気?」
「平気じゃない〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜!」
腰はまだズキズキいってるし、朝からアスファルトには座り込まなくちゃいけなくなってるし、なんでか目の前には越前君がいるし、なんでぇ!? 今日は厄日なの!?
だから、嫌って言ったのに!
学校だし、教室だし、誰が来るかわかんないし、私初めてだし、痛いって聞いてたし、怖かったし、恥ずかしかったし、それになにより好きだって言われた当日だったし!
それなのにそれなのにそれなのに―――――――――――――――――――っ!
こんな痛いならしなきゃよかった!
「ごめん、先輩。ごめん、ごめんね。痛い?」
「・・・・・・・・・痛いに決まってるでしょ。だから、嫌って言ったのに」
「ごめん、俺、止められなかった」
しゃがみ込んでいる私の前に、越前君も座り込む。
心配そうに私の顔を覗いて、彼自身の顔も申し訳なさそうに曇っていて。
手、伸ばしかけて、でもためらったように戻された。
「・・・・・・・・・ごめんなさい」
・・・・・・・・・むぅ。そんな泣きそうな顔で言われたら、これ以上怒ることなんて出来ないじゃない。
ましてや、越前君が相手なら。
「大丈夫、心配しないで」
いや、実は大丈夫でもないんだけど、でも越前君を安心させるためにどうにか笑ってみる。
「でも・・・・・・」
「もういいから。ね、学校行こう?」
拒みきれなかった私も悪いんだし、痛いけど、頑張って我慢するから。
だからね、笑って?
「俺、自転車で来たから先輩後ろ乗って! 送ってく!」
送ってくって、君も同じ学校に通ってるでしょ。
私は小さく笑いながら差し出された彼の手を取って立ち上がった。



自転車って素敵・・・・・・! 私、自転車に初めて乗ってから早十数年、こんなに便利だと思ったことはなかったわ!
しかもこいでるのは私じゃないから、それがさらに素敵!
風を切ってびゅんびゅん走る。すごい、すごいすごい速い!
でも、でもね? 一つだけ疑問があるんだけど。
「ね、越前君。テニス部の朝練は?」
「サボッた」
簡潔な答え、ありがとう。でもね――――――――――・・・・・・・・・。
「出なきゃダメでしょ! 君は一年生ながらにもレギュラーなんだからっ!」
「だって先輩のこと心配だったし」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・忘れてた! この子、カーブが投げれないんだった!!
でもってそのストレートを打ち返すようなバッティングセンスが私にはないよ!
顔が熱い・・・・・・。自転車で、良かった。顔が見えなくて本当に良かった・・・・・・。
「・・・・・・・・・俺、朝起きたら不安になって」
越前君がポツリとつぶやく。
風にまぎれて消えそうで、だから私は耳を澄まして。
「昨日の、全部夢だったのかもとか思って。俺が先輩に告白したのも、先輩が頷いてくれたのも、セックスしたのも全部夢だったんじゃないかと思」
「待って待って待って――――――っ! 朝からその手の発言はしないでぇえええ!」
夜だったらいいのっていう質問もナシっ! っていうか越前君、君本当に剛速球まっすぐすぎ!!
言われてるこっちがものすごく恥ずかしいの! だからホント、お願いだからやめて!
「・・・・・・・・・・とにかく、不安になって。気がついたら先輩の家に来てた」
「・・・・・・何時くらいからいたの?」
「テニス部の朝練が始まるくらい?」
・・・・・・・・・・・・・・・・それって、それって何時だか判らないけどものすごく早いんじゃ!?
「インターホン、押してくれればよかったのに」
いや、でもお母さんになんて説明すればいいか迷うから来てくれなくてよかったんだけど。
「押したら、夢から覚めちゃうかもしれないし」
・・・・・・・・・・なんだか、今日の越前君は可愛い。
今日のっていうか、昨日と今日しか知らないからよく判らないんだけど、でもとにかく今の彼は可愛い感じ。
すごくすごく、なんていうか、撫でたくなるような可愛さ。
こんな子だったけ? ・・・・・・・・・昨日とは、だいぶ印象が違う。
でも変わらない。ドキドキする。すごい、心臓が音立てて鳴ってる。
なんだか心が温かくなって、腰が痛いのもちょっと忘れて、甘くて幸せな気分になって。
自転車をこぐ越前君のシャツを、少しだけ強く握った。



――――――――――――――――っていうか、そろそろ降ろしてっ!
「ヤダ。だってまだ学校じゃないし」
でも周りの視線が痛いの! 学校まであと100メートルもないし、これくらい歩けるから!だからっ!
「ヤダ。絶対降ろさない」
なんでえぇえええええぇぇぇぇぇぇえ!?
「だって先輩は俺の彼女だって周りに示したいし」
―――――――――――――――――――――っ!
「俺は先輩の彼氏だって周りに知ってほしいし」
〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!
「絶っ対、降ろさない!」
・・・・・・・・・・・・・・・・なんでそんなに楽しそうな声なの――――――――――っ!?
っていうかそこでクラスメイトが笑って見てるし、あっちでは部活の後輩がなんか冷やかしてるっぽいし、先生方も登校中らしくて「青春だなぁ」なんてこと言ってるし、一年生は越前君の後ろに乗ってる私を見て「あれ誰?」とか言ってるし、二年生はどう見ても面白そうに歓声あげてるし、同学年なんか「可愛い彼氏じゃん、やったね!」とか「、おまえやっぱオチたんだなぁ!」って――――――――――・・・・・・・・・・・・・・・・?



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・みんな知ってるわけね! 昨日の逃走劇を!!
だから、だからだからだからこんなことにぃぃいいいいっ!!



「お―――――ろ―――――し―――――て―――――っ!!!」
「絶対ヤダ!」
「私もヤダ―――――っ! もうヤダっ! 自力で降りる!」
「え、うわっ! ちょっと先輩っ! 暴れないでよマジでコケる!」
「きゃぁあ!? ちょっと越前君、自転車くらいちゃんと運転しなさいっ!」
先輩が暴れなければ揺らめかないよ! 先輩こそ年上なんだからちゃんとチャリくらい乗りなよね!」
「〜〜〜〜〜〜もうやだぁっ! こんなんだったら、こんなんだったらぁ・・・・・・・・・っ」
「もう遅いよ、絶対放さない!」
越前君が大声で宣言した。



先輩は俺のなんだからっ!」



ホントに、言っちゃったよ、この子・・・・・・・・・!





――――――――――それからというものの。
私は廊下を歩けば応援のメッセージを受け取り、階段を上がり降りすれば後ろ指を指され、職員室に入れば「式はいつなんだ?」と尋ねられ、果てには「この前家の前で待ってた男の子、彼氏?可愛い子ね」なんてお母さんにまで言われてしまい。
なんか、なんか何かが違う気がする。なんでだろ?でもやっぱ、何か違くない?
「違くない違くない」
越前君の言葉はかなり嘘っぽいし。というかものすごく嘘っぽい。
だけど。
でも。
やっぱり私の心は彼だけにドキドキするわけで。
それと同じように越前君も私だけにドキドキしてくれてるみたいなわけで。
「みたいじゃなくて、してんの」
だからやっぱり、私は彼の恋人みたいで。
ということは、彼は私の恋人みたいで。
「みたいじゃないってば」
つまりは、アレなんです。
つかまって、しまったのです。



あの日、カーテン越しに聞いた告白。
あれが、決定打。9回裏2アウトからのサヨナラホームラン。



「好きだよ、先輩」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・私も、好きだよ・・・?」



どこからどうなって何がどうしてこうなってしまったんだろう。
満面の笑顔で笑う年下の彼を見ながら、ちょっと首を傾げたりした。





2003年4月4日