慎吾さんや準さんは、俺がうらやましいって言う。
さんみたいにキレイなお姉さんに構ってもらえて、うらやましいって。





かわいいひと、こっちをむいて





「・・・・・・・だけど、結構しんどいっすよ」
だって俺、さんといるとずっと理性と戦ってなきゃなんないし。
そう言ったら、準さんに思いっきり殴られた! いってぇ! 何で!? 俺、正直に言っただけなのに!
「それがムカつくんだよ! 利央のくせに!」
「まぁ、落ち着け、準太」
慎吾さんがにやにや笑いながら、準さんをなだめる。
あぁ、でもこの人がこんな風に笑ってるときはろくなことがないんだ。
いくらバカバカって言われてる俺にだってそれくらいは分かる。だてに桐青野球部に四年もいるわけじゃないし!
「で、利央」
「・・・・・・何すかぁ」
「何だっけ、その、サン?」
「はぁ」
サンって今いくつ?」
「えーと・・・・・・」
会ったときに聞いた年を思い出して、数えてみる。うん、たぶん。
「23っす」
なんか歓声が上がった。何、部室にいるみんな聞いてんの?
別に聞くだけならいいけどさ。聞くだけなら。
「何やってる人なんだ?」
「コンパニオンっす」
「こんぱにおん?」
慎吾さんの目は輝いたけど、準さんは首をかしげた。その後ろでは何気に話を聞いてた迅や他の部員も首をかしげてる。
和さんが視線をそらしたってことは・・・・・・和さんは、知ってんだ?
「写真はないのか?」
「あるっすよ。この前の幕張でやったモーターショーのやつ、一枚もらったんっす」
赤と黒のピチピチのワンピース(しかも上下に分かれてて、超ミニスカート!)を着て、にっこり笑ってるさん。俺の宝物。
それを生徒手帳から取り出したら、速攻で慎吾さんに奪われた。
「へぇ、さすが美人だな」
慎吾さんがにやにや笑って、写真を準さんに回す。
準さんは目を見開いてちょっと赤くなった。まぁ、でも、その気持ちは分かるから何も言わないでおくけどさ。
「利央、おまえもうこの人と寝たのか?」
「・・・・・・・・・慎吾さん、分かってて聞いてるっしょ」
「あぁ、そうか、ヤってないのか。まぁペットだしなぁ?」
写真が迅を経由して、和さんに回って、部員の中を飛び交ってく。あぁっ、丁寧に扱えって!
「うわ! 何だよ、この美人!」
「利央てめぇ! 自分ひとりだけいい目見てんじゃねぇよ!」
「紹介しろ、紹介!」
無視。ぜんぶ無視。紹介なんて誰がするもんか。
さんは俺のだから、絶対に誰にも見せたりなんかしねぇ。ぜーったいしねぇ!
「でもこの人、利央の試合を見に来てくれたことないよな?」
これだけの美人なら、俺は絶対に気づく。
慎吾さんがやけに自信たっぷりにそう言った。
「・・・・・・・・・さんは、仕事が忙しいんっすよ」
「でも普通、一回くらいは見に来るよな?」
慎吾さんが準さんを見たら、準さんもしたり顔でうなずいた。
「そうっすね。利央が本当にお気に入りなら、一回くらいは見に来ますよね」
二人が、にやにやして笑う。

「利央、おまえ本当は愛されてないんじゃねぇの?」
「・・・・・・・・・!」

がーん、と頭にタライが落ちてきた。気が、した。
(どうなの、神様!)





2006年1月28日