午後六時。部活が終わって、俺たちは寮に帰り始める。
ほんとなら一年は後片付けがあるんだけど、俺や迅はレギュラーやベンチ入りしてるから、そーいうのはない。
だから部室に戻って、汗臭いユニフォームを着替えて、でもって携帯の着信チェック。
「・・・・・・あ」
週に二度くらいの割合で入ってるメールは、いっつも同じ。

【リオ、いっしょにご飯食べよ?】

さんからの、お誘いメール。





かわいいひと、こっちをむいて





さんは、よく分かんない人だ。
気まぐれに俺を呼び出して、ご飯食べたりテレビ見たり、ときどきぎゅー・・・・・・・とかしたりする。
でもエッチとかはさせてくんないし、いつも寮の門限までには帰らされる。
俺はさんのことが好きだし、さんも俺のことが好きだって言ってくれるけど、でも俺たちは恋人じゃないと思う。
だってさんの俺に対する好きって・・・・・・・・・ペットに対する、好き、らしいし・・・。
「どうしたの、リオ?」
「・・・・・・自分で考えて凹んでるんす・・・」
「そうなの? よしよし」
さんの手が、俺の頭をなでる。
さんはどうやら俺のこの髪が好きらしい。色素が薄くて茶っこい、天パのくるくるが。
俺は準さんみたいな黒髪まっすぐがいいなぁって思うけど、さんがそう言ってくれるなら、クォーターでよかったと思う。うん。
「元気でた?」
「キスしてくれたら出るっす」
「・・・・・・リオのあまえんぼう」
少しだけ笑って、さんは俺の耳をくすぐる。でもっておでこと、頬と、まぶたと、鼻と、あご。
最後に唇に、キスをしてくれた。
さんのキスは、いつも何だかふわふわしてる。生々しくないのは、絶対に舌を絡めてないからじゃない。
「ご飯食べよ?」
さんが離れてくときに、長い髪が俺の頬をくすぐった。
部活から直行した俺もシャワーを借りたから、今の俺とさんは同じシャンプーの匂いがしてる。
・・・・・・・・・うっわ、やべ。落ち着け、俺!
「ゆ、夕飯、何?」
「中華丼とわかめたまごスープ。リオ、たまねぎも食べるのよ?」
「・・・うーっす」
俺も運ぶのを手伝って、熱々のご飯にありつく。さんの料理は、うまいから好き。
「いただきます」
「いただきます」
あと三十分で九時になるから、これ食ったら帰んなきゃいけないんだけど。
それまでにもう一回、チュウしてもらえるかなぁ。
そんなことを考えながら、俺はタマネギを飲み込んだ。





2006年1月28日