・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・あれ?
なんか、入ってる。
空色の、綺麗な紙。
開けてみよっと。



拝啓
突然のお手紙で申し訳ありません。
このたびお話したいことがありまして、筆を取りました次第です。
もしよろしければ本日の放課後、新校舎屋上まで足をお運び頂けないでしょうか。
お待ちしております。
かしこ



――――――――――いまどきめずらC!
たぶんこれってラブレターってやつだ! すごい! 俺はじめてもらった!!(感激)
最初はキョーハク文(漢字わかんない)かと思っちゃったけど、でもこれってたぶんラブレター!
すごい! すごいすごいコフー(古風?)! でもなんかいい感じ!
えへへ。面と向かって言われるのもいいけど、たまにはこういうのもいいよねぇ。
いったい誰からだろ?



3年A組 



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・これ、間違ってる。
俺じゃなくて跡部宛てじゃんか。





OK





つまんない。
つまんないつまんないつまんないつまんない。
つまんない。



つーまーんーなーいーっ!!!



「おい芥川。話聞いてるか?」
「きーてませんっ!」



先生の話なんか聞く気分じゃないし。ていうか授業中はいっつも寝てるし。
あーあぁ、なんでだろ。なんで俺の下駄箱って跡部の隣なんだろ。
隣じゃなくてもっと離れてれば間違ってさんがラブレター入れたりすることもなかったのにさー。
あ、でもそしたら気づけなかったかも。さんが跡部に告白するのに。
それもやだなぁ。だったらやっぱり隣でよかったのかも。(うん!)



さん、やっぱり跡部のことスキだったんだなぁ。(ちょっとショック)



・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。



「ちょっとどころじゃないし!」
「なっ!? ど、どうした芥川!?」
「だからなんでもないのっ! せんせーは黙ってて!」



うーんうーん、やっぱりこの手紙って跡部に渡すべきなのかなぁ。
でも渡したくないなぁ。だってこれラブレターだもん、さんからの。
さんからの。さんからの。
他の人からのならいくらでもあげるけど、でもさんのはダメ、絶対あげない。
うん、あげない!(決定



・・・・・・・・・・・・でも、今日の待ち合わせに跡部がいかなかったらさんは泣いちゃうかもしんない。



それも・・・・・・・・・やだ。
うーん、どうしよ。



「うっわ! マジでジローが起きてる!!」
「ホンマや。何か悪いモンでも食ったん?」
屋上でごはん食べてたら向日と忍足が来た。でもってさっきの宍戸と鳳と同じ反応した。
「芥川先輩が授業中にも寝ないなんて初めてじゃないですか・・・・・・?」
べつにいつも寝てるわけじゃないし。寝てないときとかたまにあるし。
「いや、ないだろ」
俺だって眠れないときとかあるんですー。



たとえばさんが関わってるときとかね!(今がまさにそのとき)



「そーいやさ、跡部。おまえ彼女と別れたってホント? 噂になってるぞ?」
「メールしろ電話しろってうるさい女と付き合えっかよ」



!!!!!!!!!!



「あ、ああああああああああああ跡部!!!!!」
「な、なんだよ」
「別れちゃったの!? 彼女と!?」
「・・・・・・・・・あぁ」



ど、どうしよ! 跡部は今現在フリーになっちゃったよ!!
このまま放課後にさんが告白したらオッケーしちゃうよ!(跡部はそういうヤツだし!)
そ・れ・だ・け・は・だ・め!!!!!



決めた! ごめんね、さんっ!!



俺で我慢して! てゆーか俺のこと好きになって!!
そうすればバンジカイケツ!!



なんかいろいろ決めたら眠くなってきたー・・・・・・。
「おい、ジロー。もう昼休み終わるで」
「・・・・・・・・・んー・・・午後は俺、やすむ」
午前中ちゃんと出たし、それに放課後は決戦だし。
体力やしなっておかなきゃ・・・・・・。
「まぁ今日は部活もないしいいだろ。ちゃんと下校時刻までに帰れよ」
「・・・・・・んー」
あー・・・・・・そうだぁ・・・。
「・・・あとべぇ」
「・・・・・・・・・何だ」



「ごめんねぇ?」



さんは俺が大切にするから、跡部は他に告ってきた子とつきあってね。
俺とさんは幸せになるから、心配しないでいーよー。
だから邪魔だけはしないでね。(したら跡部でも容赦なし!)



跡部は意味が判ってない顔で屋上から出て行って、向日や忍足たちも出て行って、俺だけ一人ぽつんって残った。
放課後まであと三時間かぁ。早くこないかなぁ。
早くこないかなぁ、さん。



俺のことスキになってくれないかなぁ。
そうしたら俺、ぜったいしあわせ。



あー・・・・・・・・・ねむ・・・。



俺、なんとなくわかるんだよね。「この人はあの人のことが好きなんだ」って。
なんか、なんでか、なんとなーく見てるとわかるんだよね。
でもさんはわかんなかった。
中学三年生だから好きな人の一人でもいていいのに(俺はテニスが一番だけど。あ、でもそれもさんに会うまでの話)、それなのに全然わかんなくて。
変なのーって思ってた。
それでちょっと見てた。
そうしたら好きになっちゃった。
好きになっちゃったら分かっちゃったんだよね。
さんは、跡部が好きなんだって。
俺、ソッコーで失恋しちゃったしぃ・・・・・・・・・。
グスン。悲C・・・・・・。

かなしー・・・・・・・・・。

それでも気になっちゃうから見てたら、さんは跡部とつきあいたいって思ってないことがわかった。
ほんと、変なの。好きになったらつきあいたいって思うもんじゃないの?(少なくとも、俺はさんとつきあいたいよ?)
なのにさんはそんな感じじゃなくて。
どっちかってゆーと、跡部に人として意識してもらいたいって感じ?
跡部はテニスの強いやつとか、根性のあるやつとか、そーゆー人しか認めないし。
ましてや女の子なんて見下してる感じもあるしねぇ。(外道! 外道跡部ー!)
だからさんがそう考えるのってちょっとわかるかも。
でもさ、でもさ。



告白してフラれて、それで記憶に残ろうとするのはどうかと思うよー・・・・・・?



さん、可愛いのに。可愛くておっちょこちょいで楽しいのに。
俺、さんのこと見てるとドキドキするのに。
なのになんで跡部なのかなー。
さんってわかんないことだらけだけど、男の趣味が一番わかんない。
俺のこと、好きになればいーのに。そうすれば両思いになれるのに。
幸せになれるのに、楽しくなれるのに。
でもって俺もすっごく嬉しくなれるのに!



ねぇ、さん。
俺のことを好きになって?



重いドアがゆっくりと開いていく音がして。
「芥川君・・・・・・・・・?」
さんの、声がする。
どうしよ、どうしよ、好きになってもらわなくちゃ。
瞼をどうにか上げてみると、やっぱりさんがこっちを見てて。
えーっと、えっと。
――――――――――――――――――――あっ、そうだ!



さんさん、俺のことを好きになーれっ!!



この呪文で叶っちゃったんだから、俺ってひょっとして魔法使いなのかも?
さん専用だけどね!



これからもさんが俺のことを好きでいてくれますよーにっ!!



邪魔したら潰すからね、跡部。
覚悟しててねー?





2003年6月2日